当初から素性の良さを見せていた
クリプトン KX-1
を
さらに調整で追い込んでみた。
当初の機材は以下のとおり。
プリメイン ビクターAX-V1
CDプレーヤー ビクターXL-V1
ADプレーヤー ヤマハ GT-2000(ピュアストレートYSA-2で調整予定)
SPケーブル 江川三郎工房 6N無方向性ケーブル
機材は、アンプとCDをビクターの後で使っていたオンキヨーコンビに入れ替えた。
プリメイン オンキヨー A-1VL
CDプレーヤー オンキヨー C-1VL
(入れ替え時に極性は追い込んでいる)

艶やかで軽やかに鳴らすビクターでも良かったが、
低域の制動と中域の肥大傾向を解決するため、
制動力のあるデジタルアンプが良いと仮定して
何度か入れ替え視聴して決定。
(ピアノの打鍵音はビクターが現実感がある。打鍵とそのあとの短い余韻、ペダリングの響きはデジタルでは整然としているが、アナログアンプが再現性が高いように感じる。意外に声はデジタルが良かった)
3か月のチューニングは以下のとおり。
SPケーブルは、ヨドバシマルティメディア館で
イギリスのQED製を2種類見繕ってきて、
何度か江川ケーブルと聞き比べた。

一時は、江川+QEDの2本駆動に落ち着きかけたが、
迫力はあるが、音像と音場が一体となったサイボーグのような音に違和感があり
江川ケーブルの純度の高い再生に落ち着いた。
細いケーブルながら音像は決してこじんまりとせず
スピーカーの前面に展開する。
その一方で音場の響きはスピーカーの外まで拡散する。
濃淡の描き分けがKX-1の特徴で
その再生音を活かすのは江川ケーブルである。
(残念ながら江川氏のご逝去で現在では入手はできない)
QEDの2種類では、廉価なQED Performance Originalがバランスが良かった。
広域から低域までトランジェントと音場が揃っており
違和感なく音楽を聴かせる。
(ほとんどのオーディオ装置はこの1メートル1,000円程度のケーブルで十分だろう)。
ケーブルに尖った個性は邪魔になる。
ただし、江川ケーブルがケーブルの存在を感じさせない再生音と比べることはできない。
廉価なケーブルは、限られた予算で良い結果をもたらすことが多い。
必要最小限の潔さが単純で合理性のある構造となって音に良い結果をもたらしている。
(取って付けたような太いケーブルは滑稽に見える。ケーブルで付帯音をつくりだす?)
そこでソニーの廉価なピンケーブルも揃えた。
0.5メートルで数百円だが、
2014年に生産中止となってからはプレミアム価格となっている。
それでもいまのうちに入手しておくのが良いと思う。
SONY ピンプラグ(×2)とピンプラグ(×2)0.5m RK-C305
SPケーブルは圧着用のY端子で圧着した。
オーディオ用と称するYラグは使わなかった。
オーディオ用のY端子が意味がないことは
SPケーブルやラインケーブルとおわかりのとおり。
(高価であるための複雑な構造が音の肥大、濁りをもたらす怖れ)
Y端子圧着処理によって経年変化の影響を受けにくいこと、
SPケーブルを何度も変えてみたいこと、
細い銅線はY端子で束ねるほうが好結果であると判断したことによる。

工具と電材を持っていれば、経年変化とともに自分で何度でも圧着し直せる。
使った素材は、国産の電材専門メーカーであるニチフ製である。
江川三郎ケーブルは2Y−8規格を、QEDの太い方は5.5Y−8が適合した。
(5.5Y-6は一般的なサイズだが、アンプやSP端子を見ると付かなかった可能性が高い)
ニチフの5.5Y-8は特殊サイズということで受注生産扱いのため、
店頭で見つけにくいが取り寄せで入手できる。
ともに100個入って1,000円台である。
購入の際には、端子の太さのビニール皮膜、圧着用の工具もお忘れなく。
南海地震を想定してスピーカーを固定したいが、
良い方法が見つからない。
スピーカー台はクリプトン純正のSD-1を使っている。
平面製の良い仕上げであるためか
スピーカーに触れるだけでくるりと動いてしまう。
(接触でスピーカーを落下させかねない)
震度3〜4程度の揺れにも不安がある。
そこで、再生音と半固定を両立させる方策を考えて
次の方法にたどりついた。
それは、次のアクセサリーを使う方法である。
ベスト マットマン7+ 5ミリ厚 丸 20ミリ 4個入り 30ミリ 6個入り 0524-001
DIYや家電量販店に類似品は置いてあるが
可塑剤を含まないことでプラスチック(塗装面)に影響を与えないのは
この材質(イソブチレン樹脂)だけのようだ。龍田化学が製造元である。
使う前に低域の反応が鈍くなる、高域が丸くなることと予想していた。
そこで1か月かけて、「あり」と「なし」を聞き比べた。
SWOT分析風に書くとKX-1の強み弱みはこうなる。
【強み】
・中域が痩せない。
・高域が伸びているが、うるさくない。
・低域の音程が明確でよく弾む。
・歪み感が極小で音楽に浸れる。
・密閉型で経年変化に強い。
【弱み】
・音質の問題ではないが、SP台に固定できず動きやすい。
【機会】
・アナログレコードなど存在感のある音源をふくよかに鳴らしたい。
・ハイレゾなど超高域まで伸びたソースで可聴帯域内を円滑に鳴らしたい。
【脅威】
・何も対策をしなければ、中程度の揺れでSPが落下する。
この強みを活かし弱みを解決しつつ、
古い音源や新しい方式に対応していく調整を行えば良いわけだ。
この解決に役立ったのがこれである。
音の傾向を記すと
・ばらばらに拡散していた音像がまとまり、音の立ち上がりが円滑になる。
・低域はやや有機的に弾むようになる。
・高域はエネルギーがまとまることで存在感が出てくる。
ありとなしで、どちらが音楽を聴きたいか(聴く時間が長くなるか)。
短期間のAB比較よりも長期的な反応を探ることで結論を間違わない。
(店頭での試聴と違って自分の機材を自室で鳴らせるので長期順応を見るのが適切)

テストのときはスピーカー側のビニールをはがさずに運用する。
自分のSPに必要と判断した時点でビニールを剥がして半固定すれば良い。
(この状態では相当の力で動かない。震度7対応とうたっているのは頷ける)
設置の際は、前方に直径30o厚さ5oの丸形を2枚(ユニットが付いて重い)、後方に1枚使用する。
今度はSP台の固定が必要となるが、
まずは、SP台とラックを梱包用ビニール紐で縛り付けて解決。
(見た目は悪いが、かなりの揺れに耐えるはず)
調整後、さらに音楽を聴く時間が増えている。
ベートーヴェンのピアノソナタ集を異なるアーティストで3セット購入するなど
音楽に浸っている。
(ベートーヴェンについてはまた書きたい)
KX-1からの再生音は、立ち上がり立ち下がりが早く歪み感がないため
耳にやさしい。
どれだけ音量を上げてもうるさくならない。
耳の感度の良い人間が「うるさくない」「長時間浸れる」というのは
ホンモノのスピーカーの証しである。
(なお、忠実度の低い再生音もかえって疲れる。耳が聞き取ろうと無意識に脳を使うためではないかと推測)
高額なSPが良いとは限らない。
評論家が絶賛するあの新素材のSPにも試聴の結果、だめ出しをしている。
KX-1にはハイテク素材ではなく
長く使われている自然素材が使われている。
ツイーターは絹を成形したもので
中央のプラグは金属というメカニカル2ウェイである。
物理的に理にかなう方式と思う。
KRYPTON KX-1のリングダイアフラム・ツイーター

ウーファーは、ドイツの針葉樹である。
クルトミューラー社が長年にわたって管理する
針葉樹の森からつくられた20センチ径のパルプコーンを
17センチに切り取る方式で材料の歪みを避けている。

生きていくのに音楽が欠かせない人には、
KRYPTON KX-1は良い選択肢のスピーカーである。
クリプトン 2ウェイ密閉型スピーカーシステム モアビ仕上【2本1組】KRIPTON KX-1
→
KX-1 プリメインアンプで鳴らして比較→
KX-1でモーツァルトを聴く追記
余談だが、友人がテクニクスの世界300台限定のSL-1200GAEが購入できたとのことで
その調整に行き、実際に音も聴いてみた。

端正な音である。
それを、あのマークレビンソンのMCヘッドアンプが手本にしたという
フィデリックスの天才技術者が開発したフォノイコライザーで聴いている。
まさに鬼に金棒の入口である。


音の印象だが、SN感はCDのようであり、
CDと比べても音の細やかさとかたまり感のいずれも上回る。
アナログの良さが感じられた。

テクニクスは精巧なメカの操作感で
オリジナルのDJ仕様の1200とは比べられない優秀なプレーヤーだが、
もっと音楽をうたわせたい人は
レガなどイギリス産の廉価なベルトドライブが良いかもしれない。