相変わらず音楽を聴くのが楽しみで仕方ない。
それどころか音楽がますます近く感じるようになった。
ぼくは「ながら」では聴かないので音楽を聴くのは自分のなかで特別な時間。
KX-1でなければこの時間はなかったと思う。
だから、少なくとも聴く2時間前にはオンキヨーのプリメインA-1VLの電源を入れておく。
(このアンプは発熱はほとんどなく、省エネルギーでもある)
当初はビクターのAX-V1であった。
ピアノの響きが美しくさすがビクターと思ったが、
声が肥大気味で声の実在感を求めてオンキヨーにした。
どちらのアンプも10年以上使い込んでいるが劣化は感じない。
東京出張の折、ヨドバシマルティメディアに2日続けて通い、
クリプトンKX-1に
プリメインを組み合わせて鳴らしてみた。
声が中心で楽器が少ないものを、とのリクエストに
スタッフが用意してくれたのはカサンドラ・ウィルソン。
(これは幸運にも所有していて聞き慣れていた)。
CDプレーヤーはマランツSA-14S1に固定、
以下に短評。
デノンPMA-2500NE
中域はしっかりしていてクリアだが、
ややメタリックな気配はあるのが第一印象。
中域は前へ出てくる感じはある。悪くはないが魅力にも乏しい。
半年前に聴いたときは好印象であったが、
時間の経過で変化することもある。
音楽に向かい合う時間が長くなるかそうでないかが
良いオーディオ装置とそうでない装置の分かれ目。
(これは聴く時間が長くならない、という結論。B&Wの最新機種のように)
ヤマハA-S2100
気が進まなかったが、係員の勧めで試聴。
再生音は、中域がおとなしく高域は平板。
(この印象の初手から変わらない)
これだけを聞いていると悪い音ではないが、
長い期間に付き合えるかどうかは疑問。
かつての所有していたA2000aは中低域がソフトで物足りないが
(音の輪郭、実在感はデンオンの廉価機種に負けていた)
浮游するきらめきや透明度があった。
歪み感なく高域が空間を共鳴させる澄んだ再生。
低域は豊かに響くが肥大はしない。
このアンプは発売当時、
すばらしいデザインと優雅な音質で評判となったもの。
人の気持ちに寄り添う音作りがいまのヤマハには必要ではないか。
(ヤマハは、CA400,A-5、A-6(a)、A-2000aと聴いているので音のDNAはぼくの体内にしみこんでいる)
スピーカーのNS-1000Mは音楽を聴くための楽器であった。
北欧の放送局でモニタースピーカーとして使われていたという事実もあるが、
このスピーカーが奏でる弦楽器やピアノの陶酔的な実在感は
当時の世界にこのスピーカーだけと思った。
オーディオ専門店の店主が
1000Mが世評の割に大したことを説得するために
ヨーロッパのモニターを鳴らしたことがあったが
どちらが音楽を奏でているかは一聴でわかった。
1000Mは音速の早いベリリウムの先入観があるが
実は細やかな音は得意ではない。
むしろ音像の塊感、実在感で聴かせる。
ホールトーンは苦手で高域の独特の艶は素材の特性にもよるだろう。
しかし彫りの深い音は聴いていて納得感がある。
原音再生というよりは、ヤマハのグランドコンサートにも似て
つくられた音だが、熟成してくると得も言われぬ豊潤な音がする。
(だから、いまでも人気がある)
友人宅の1000M。うちにあったA-2000aもこちらで現役だ。
ターンテーブルはテクニクスの限定モデルに変更されている。

視聴に戻ろう。
ラックスマンL-550AXII
密度が高く中高域の艶と粒立ちがあり、ハーモニーの純度が高い。
豊潤というよりは引き締まって結晶化している。
A級だが天板に触れてみると発熱はさほどでもなかった。
隙間が5センチ程度あれば問題ないかもしれない。
音のアタックが水晶のようなきらめきを伴うが、
うるさい感じはなく、はっとする音の瞬間がある。
きめ細かさ、解像度はプリメインアンプでも最上級で
そこにトロンとした艶が隠し味で加わる。
部屋中にビッグバンドのジャズを
大きな音像(音量という意味ではない)で聴きたい人には向かないが
夜中に小音量で親密に音楽と向かい合いたい人には向いている。
ほんとうに良いアンプだ。
ラックスマンL-507UX
音の構えが大きく広がり感はDENON以上だが、凝縮感はいまひとつ。
声は太く音像は肥大化する傾向を感じる。
(ビッグバンドやオーケストラのスケール感はこちらだ)
ゆったりと楽器の輪郭が現れるので長時間聴ける。
かつて感じた声のハスキーさは感じなかった。
同じラックスでの比較は密度感は550に譲るが開放感は優る。
(507は友人宅ではダイアトーンDS1000Zをうまく鳴らしている)
L-550AXIIのような魅惑的な瞬間は少なく野放図になりきる。
翌日も比較試聴を行うが、やはりA級が好印象。
KX-1とであれば、現行507をあえて買う理由はない。
ソニーTA-A1ES
みずみずしく癖のない印象。中高域にエネルギー感があるが、
音楽の沈み込む表情など抑揚は出ない。
ポップスだけなら悪くない。
KX-1は、どのアンプを組み合わせても問題はないが、
(1)高域は歪み感が少なく伸びきったもの
(2)中域は存在感があるもの
(3)低域は制動が効いて音程が掴めるもの、
(4)全体は自然で誇張感がないアンプが合うのはわかっていた。
(この4つの要素はKX-1の強みを活かすための鉄則だが、優先順位は(3)だろう)
結果は買い替えるほどの必然性を感じなく、
現況のオンキヨーのデジタルアンプの質の高い低域が得られるかどうかの確信は持てなかった。
(いま見てもシンプルな回路、良質の部品と強みを絞りこんだ見事な設計)
http://www.jp.onkyo.com/support/audiovisual/discontinued_products/a1vl/index.htm
しかし、あえてプリメインをいま選ぶのなら結果は明白だ。
音楽を次々と聴きたくなったのはL-550AXII。
高域の浮游するような遊離感、ほんのりと桜色の艶やかな音色、
中域の密度の高さは声をぎゅっと凝縮する。
低域はオンキヨーが上回る印象だが、弱点とは言えない。
現役の機種では有望なプリメインだろう。
ただしA級の発熱が許容できれば。
(ぼくは深夜に音楽を聴いていてそのまま寝入ってしまう。冬はまだしもエアコンのない部屋で夏場はどうか。夏場はオンキヨーの涼しげな音に浸るという手もあるが)
→ KX-1でモーツァルトを聴く
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