2022年07月19日

迷走するフジのXシリーズデジタルカメラ


ここ数年富士フイルムから発売されるデジタルカメラで魅力的なものがないような気がする。フジといえば、フィルムカメラのような操作性、フィルムを選択するがごとく選ぶ色再現などの愉しさがあった。

ところがライカを意識するマニアに人気のX-Pro2の後継機Pro-3が背面液晶のギミックが受け容れられず(プロは画像確認がこんな面倒なカメラは使えないし、ハイアマであってもマニアックすぎる。意識高い系&スノッブ系をターゲットにしているが、写真好きには?のコンセプトだった)。X-T4は写真好きには受け容れられないバリアングル(動画撮影を意識したものだが操作性の完成度は低い)、X-S10はソニーやキヤノンのような操作性で便利そうに見えるけれど琴線に触れないカメラ。
満を持して登場したX-H2シリーズもバリアングルとモードダイヤルで写真好きの期待を裏切っている(モードダイヤルについてはこちらを好む人や慣れている人がいるのは理解できる。また、サードパーティからの絞り環のないレンズとも親和性が高いだろう)。

シャッターダイヤルが独立しているとこんな使い方ができる。たいがいは速度をAモード(絞り優先)にしているが、動きの速い蝶が花にやってきたとする。どれぐらいだったら止められるか、多少のブレ感を作画に活かすためにどのぐらいのシャッター速度がよいかなど、とっさにAから1/2000秒に回せばよい。絞りは設定したまま、シャッターは指定したもので、ISOオートにしていればそこで合わせられる。実用的なISOであれば多少上がっても被写体のブレが減るほうが絵として見栄えがする。

だからいまフジのカメラでもっともおすすめできるのはレトロな外観に新しい画像エンジンを実装したX-T30マークU。このカメラはそれ以前の世代のカメラよりも色再現性が自然で小型かつレトロでありながら操作性は良好。シャッターのストロークが短いためボディ内手ぶれ補正がなくても手ぶれしにくい。
より重量があってグリップもしっかりしているX-T2のほうが手ぶれしやすいのはシャッターのストロークが深すぎるからである(その反面半押しはやりやすくなったが)。
ストロークが短いと手ぶれしにくくなるのは、人間が息を止めて静止できる状態を長く保つことが難しいためで、いまだ!と思ったときにシャッターが切れると手ぶれを防ぎやすい。
さらにこのカメラには上級機にはないフラッシュを内蔵している。これが日中シンクロや光量が足りない場面で被写体を鮮明に写すことができる効果がある。チルト液晶も速写性が高く、バリアングルと違ってボディから離れないために破損の怖れが少ないのも利点。バリアングルではローアングルは取りづらい。ぼくのようにスミレのような地面に咲く植物を撮影する人間はバリアングルは使えない。写真好きには価格も手頃で基本性能が高いX-T30マークUがフジでもっとも良い選択肢と思う。

と書いたところで発売後1年未満のこの機種が生産中止とのこと。バッテリーもフジでもっとも一般的な機種で複数所持している人は少なくない。このカメラは万難を排しても入手しておきたい機種である。

北米などの巨大市場をめざしてグローバル化したスバルのレガシーがスバリストたちにそっぽを向かれたように(だからレヴォーグが設定された)、日本市場向けというよりはフジの立ち位置を支持している顧客のための製品を作り続けなければ、顧客は逃げてしまうだろう。
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空と海

at 23:37| 人生を楽しむ道具

2021年05月02日

フジフイルムのフィルムシミュレーションで見る庭のすみれの色の変化


フジフイルムのカメラにはかつて同社から販売されていたフィルム名が付いた色の選択肢がある。
X-T30とXF35mmF1.4 Rの組み合わせでどんな色の変化があるかを見てみよう。

PROVIA
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Velvia
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ASTIA
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PRO Neg. Std
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PRO Neg. Hi
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クラシッククローム
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ETERNA
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ACROS
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2020年10月04日

ミノルタNewMD24mmF2.8 最新レンズと遜色なくみごとな性能


久しぶりに連れだしたのはミノルタのMD24mmF2.8。
これをマウンドアダプターでフジX-T2に付けると36mm相当になる。
等倍で見ると中央付近ではこれほど解像力が高かったかと見直した。

ピントは実絞りで合わせなければならないので絞りf4としたが、もう一段絞ってもよかったかな。
画角は広いもののフジの単焦点14mmF2.8(絞りf5.6)で同じ場所を撮影すると
さすがに画面の均質性、繊細な線、抜けの良い空気感はフジのなかでもトップクラスのレンズである。
しかしミノルタの抜け感は現代の優秀なレンズと遜色なかった。
カメラのホワイトバランスは「晴天」なので
レンズからの信号の有無で変わることはない。
驚くなかれ色再現もフジとミノルタでは見分けが付かないほどであった。
強いていえばフジのほうがコントラストがわずかに高く、色温度も気持ち高い程度。
ミノルタの階調、特に暗部がつぶれにくく階調がおだやかな感じ。
ただし絞りの関係か良像範囲はフジが広い。
(14mmはトリミングして画角をだいたい合わせている。階調や色の再現性を見ていただくのがねらいなので。中央の解像度は等倍でみれば互角)

フジX-T2+XF14mmF2.8→ f5.6
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フジX-T2+MD24mmF2.8→ f4
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2020年03月29日

災害時に役立つラジオ(2020年版)


災害時の情報収集にはラジオは不可欠です。
それは電池の持続時間が長いことと周囲にいる人と情報共有できるからです。
これまでもICF-801ICF-R351といった製品を推薦してきましたが
製造中止で手に入りにくくなっているため、
新たにおすすめできるものを厳選しました。
(お手元にあるもので不満がなければ買い替える必要はありません)

災害時に一般的に求められる仕様は以下のとおりです。
・乾電池で使えること
・100時間以上使えること
・誰でも使えること
・音が良いこと(重要)
・持ち運びできること

ただし選局の容易さはデジタル式(PLLシンセサイザー方式)が優ります。
自分専用であればそれで良いのですが、ファンクションでの切り替えを多用するダイヤルやボタンを操作しながらの操作は初めての人には困難です。
家族全員が使えることなどを考えれば、選局の面倒さはあってもアナログラジオ(ダイヤル選局)がおすすめです。乾電池の寿命もデジタル式と比べて長めなのも好都合。
 なお、ここでご紹介するラジオはAM放送をFMで聴けるワイドFM(FM補完放送)に対応しています。

パターン1 携帯用(常時持ち歩く用)として
シャツやズボンのポケットに入る、もしくは首からぶら下げて苦にならない、
カバンに常時入れておきたいという用途にはこの大きさが最適です。
単四1本で長時間持つのも好都合ですが、
念のため予備の電池を1本忍ばせておくのがさらに賢明
(電池は100円ショップで売っているような小さなビニールケースに入れておくとよいでしょう)

スピーカーも内蔵されていますが、どちらかといえば自分専用の用途です。
出張の多い人は必携です(ぼくは毎日持ち歩いています。記事はこちら)。

なお、イヤフォンが2個あるステレオではなくモノーラル(イヤフォン1個仕様)を選びます。
電池寿命の長さ、取り扱いのしやすさ、片耳を開けられることから聴きながらの安全を確保するためです。
ステレオよりモノーラル受信が安定しているので聞きやすさもあります。
小型だからバーアンテナが小さく受信感度が劣るのではないか、
ノイズが多いのではないかとの危惧は不要です。
ローカル局の受信においてはSN比が良好で受信感度も十分です。
ただしスピーカーが付いていてもおまけ程度。イヤフォンでの運用が基本です。
ぼくは東日本大震災のときに県外出張していて
そのときの経験から携帯ラジオをいつも持ち歩くようになりました。
→ ICF-R351(レビュー) いつも持ち歩く携帯ラジオ。 もし、出張先や仕事で災害に巻き込まれたら…

現行製品では下記が良いでしょう(ただし保有する携帯ラジオに不満がなければ新型に買い替える必要はありません)。

FMステレオ/AM PLLシンセサイザーラジオ SRF-R356
FM/AM放送の2バンド対応。巻き取り式イヤーレシーバー内蔵でコンパクト&最長100時間使用可能なスタミナ名刺サイズラジオ
https://amzn.to/39tMLiK



パターン2.場所を移動しながらラジオを聴くが、それほど持ち運びは多くない。電池で長時間使えるもの、操作が簡単なものが欲しい

パナソニック FM-AM2バンドレシーバー RF-U155-S

三千円台の価格でありながら聞きやすい音質(周囲の数人が明瞭にかつ聴き疲れすることなく使える)と操作のしやすさでラジオのお手本のような機種です。
電池寿命が長いことと音質の良さ(やわらかいのに明瞭度が高く聴き疲れしない)に加えて、
電源ボタン兼ボリュームで電源を切るときに音量を下げるのでガリオームが出にくい利点があります(長年ラジオなどを使っていると音量調整を回した際にバリバリ音を立てることがあります。可変抵抗の接触が劣化してくるので電源を切っている状態で音量調整つまみをぐるぐる回してやるとある程度回復します)

最新型のU155はアナログつまみを使用したデジタル選曲になっています。
そのひとつ前の旧型U150はまったく同じデザインながらアナログ選曲です(操作法はデジタルも同じですが違和感が少ないでしょう)。
旧型があればそちらを優先して探すのも有力です。
https://amzn.to/2WNyFWV


旧型 RF-U150A-S
https://amzn.to/2QSIAGU


パターン3 普段から自宅や仕事場でラジオを鳴らすので電源コンセントで使いたいが、非常時は電池である程度使えるものがいい。

(1)乾電池主体で運用する場合
普段はAC駆動であっても非常時は電池駆動にするねらいです。
このクラスになると1万円を超えるぐらいになりますが
受信性能(選択度、周波数安定度、受信感度)は格段に向上します。
PLLシンセサイザー方式で安定かつ選択度が確保できます。
バリコンのような経年変化がないことも特筆されます。
地域を選べば放送局がプリセットする機能が標準装備されています。
もちろん周波数を変化させるマニュアル選局も可能です。
ソニーの現行製品からは2機種を選びました。
まずは、乾電池を主力に使う比較的小型の機種です。
乾電池とはいえ長寿命で単三電池に充電池を使います。
コンセントにつながないことで置き場所場所の制約がなく持ち運びが容易であること、
商用電源からのノイズとも切り放されてさらに受信性能が上がる可能性があります。
旧サンヨーのエネループのパナソニック版の標準仕様が充電池のなかでは安定しています。
それと電池1個ごとに診断を行って充電を行うセンシング機能の付いた充電池とのセットがあれば
あとあと使い勝手が良いでしょう。
https://www.yodobashi.com/product/100000001003955268/
(単三4本とセンシング機能の充電器の本セットがおすすめ。急速充電ではないので電池にもやさしい)

ワンセグTV音声/FMステレオ/AMラジオ XDR-56TV
お気に入りボタン搭載でかんたん選局。シンプル&コンパクトなワンセグTV音声受信ポータブルラジオ

ぼくがいまもっともおすすめするのはこの機種です。
何と言ってもテレビ音声が受信できること。
これによってラジオで聴きたい情報がない場合にすぐに当たることができます。
テレビの場合でも画面がなくて音声だけでも内容は把握できるよう放送されています。
周囲の臨場感や緊迫感はラジオにはないテレビ音声の良さです。

電池寿命は単三アルカリ4本使用時で以下のとおりです。
TV受信時(スピーカー使用) 27時間
FM受信時(スピーカー使用) 50時間
AM受信時(スピーカー使用)55時間

選局については上面のボタンにプリセット登録しておけば慣れない人でも使えるでしょう。
AMはノイズレス、FMの受信感度もすばらしく(ワンセグ受信のためでしょう)
音声は端正で聴きやすいもの。FM放送を聴くことも多いです。
色は黒と白がありますが、災害時は目立つよう白がおすすめです。
https://amzn.to/2UGP5Od

→ 関空の事故 北海道の大地震 自分の身を守れるか XDR-56TV

(2)AC主体で運用して非常時に乾電池を使う場合
ワンセグTV音声-FM-AM 3バンドレシーバー RF-U180TV

同様にワンセグによるテレビ音声が受信できるコンセプトで音質が10p口径のスピーカーを採用しているのパナソニックRF-U180TV-K
パナソニックは伝統的に聴きやすい音質でホームラジオとしておすすめです。
単2乾電池を使用しますが、電池寿命はソニーのXDR-56TVより短いので普段はACで使うのが適当でしょう。


ソニーのホームラジオとしてはでしょう。
FM/AM/ラジオNIKKEIが聞ける。デザインも操作性もシンプルなホームラジオ ICF-M780N

テレビの音声は聞けませんがラジオ短波の日経が聴けるというもの。
単2乾電池で100時間というのも優れものですが、
普段はAC使用で良いでしょう。
主な特徴は以下のとおりです。
特長
FM/AM/ラジオNIKKEIを楽しめる
・ボタンを押すだけでかんたんに選局できるお気に入りラジオ局ボタン
・直感的に操作しやすい7つの前面ボタン
・設定時間が経過すると自動で電源が切れるおやすみタイマー
・指定した時間に電源が入るめざましタイマー
・操作時に画面が見やすいバックライト
・電源オフ時に時刻がわかる時計表示
・まわすだけで調節が簡単な音量つまみ
・持ちやすい取っ手付き
・家庭用電源を使用できる電源コード付属
・ワイドFM(FM補完放送)に対応
・単2形アルカリ乾電池(別売)に対応



大きさを比べてみる
ICF-801(左下、日本製の名機と言われる機種だが製造中止)、ICF-R351(携帯用ラジオ、現行はSRF-R356)、XDR-56TV(白いラジオでテレビ音声が受信できる)、RF-U170(小型のパナソニックラジオで音質が聴きやすい。現行はRF-U155)
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災害対応と称して発電ダイヤルが付いた機種もありますが
ラジオとしての基本性能は低いものが多いようです。

2020年01月02日

フジフイルムX-T2とX-T30


X-T30(Made in China)は発売とともに使い出して数ヶ月。
満足度の高いカメラである。
小さく軽量でありながら電子シャッターを駆使すれば
手ぶれ補正のないレンズで遅い速度であっても
数枚撮れば不満のない結果が得られる。
このカメラはシルバーが美しい。
中国製(Mike)のグリップを使用することでアルカスイス互換の雲台に瞬時に装着できる。
純正ではないが、精度、品質感は高いもので信頼できる。
X-T30はこのグリップ付を標準と考えたらいい。握りやすさはブレの少なさ、ボタンのご操作の減少、三脚装着時に本体下面の傷を防げるなど利点は大きい。
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X-T2(Made in Japan)は至れりつくせりの万能カメラである。
ほとんどの設定が電源を入れずに可視化できる唯一のカメラではないか。
往年の一眼レフ、例えばコンタックスRTSを思わせるムダのない造形で
フジの完成形である。
後継機X-T3が出ているが、X-T2を使っている人は買い換えの必要がない機種である。
このカメラは黒が似合う。
グリップは純正を付けている。このことでアルカスイス互換の雲台に瞬時に装着できる。
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後継機のX-T3(Made in China)と同等の画像エンジンとセンサーを使っているX-T30と比べれば
出てくる画の傾向に違いが感じられる。
ぱっと見て一般受けしそうなのが第三世代の画像エンジンのX-T2である。
記憶色を中心にしながら忠実度の高い色彩再現ができるのが
第四世代の画像エンジンのX-T30と思う。

壮大な風景などはX-T2が見映えがすることがあるが
花の撮影などではX-T30に納得が行くことが少なくない。
緑の再現は記憶色の再現がおだやか(第三世代はややメタリックな緑となることがある)、
また紫や赤が飽和しにくいのも第四世代。

指一本での露出補正はX-T30がやりやすい。
X-T2は指2本でつまむのが標準的な使い方。
いずれもCポジションと前ダイヤルを使う手もあるが
現位置を可視化できることと、前ダイヤルでの運用が使いやすいとは感じないので
メカダイヤルによる補正を行う。
フジのカメラの美点として露出が正確であり、
JPEGだけで撮影するがブランケットは使わない。
上がりを見て露出補正をしておけばそれで十分。

フジのボディにミノルタSRマウントのレンズを付けることがあるが
色の再現性がフジの純正とは違ってくる。
もしかしたらフジ純正は被写体のRGB情報をレンズとボディでやりとりしているのではないか。
シャッターの感触に関してはX-H1のフェザータッチを他機種も採り入れて欲しい。ボディ内手ぶれ補正がないフジだからこそシャッターでブレや速写性が補えると喜ばれるだろう。

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いずれのカメラにしても大伸ばしに耐える解像感を持っている。
被写界深度が確保できて見かけ上の写真の鮮鋭度が上がること、
レンズやボディ、データ容量を小さくできることは大きな利点である。
おそらくはほとんどの状況で等倍で見たとしても
他社のフルサイズとの違いはわからないのではないか。
(1インチとは等倍にせずとも違いが明確にわかるのでAPS-Cは作品も記録も両立できる規格なのかもしれない)

というわけでしばらくは2つのカメラを中心に
レンズはいずれも日本製で
XF14mmF2.8 R、XF35mmF1.4 R、XF18-55mmF2.8-4 R LM OISの3本で行く。
(マクロのXF60mmF2.4があればさらにいいと思う)
X-T2にはズームを、X-T30には標準単焦点を付けっぱなしにしているので
ボディ2台の運用は撮影の利便性が高い。
しかも2台首からかけても重さを感じない。
望遠だけはニコンD7200+AF-S NIKKOR 70-200mm f/4G ED VRを付けている。
(この3台を首にかけていることもある)。

コンテストもSNS映えも興味がない。
趣味が写真という気持ちもない。
生きることは見つめる(洞察)することであり
その手段としてカメラがあるというだけ。
記録としての写真に徹しているが、
そのときどきに何を感じたか、どんなことに共感したかを振り返るとき
映像とともに記憶が蘇る。そして文章も書く。
時間の経過とともにそれがかけがえのない資産となっていく。
ブログはそのための道具として使っている。